浄信寺HP当寺の歴史 | 寺と税金 | 10年1日 | 愛犬の死

                  

宗教法人に関する諸法律が改正されて、自坊でも毎年県庁に書類を提出しなくてはならなくなった。お寺だけでは、食べていけないので、浄信寺ではかなり以前から、ささやかながら収益事業を営んでいます。専門の税理士などに相談もしないで、自分で税務署に提出する書類や会計計算をしてます。時々故意ではないのですが感違いして、税務指導の折りに、指摘を受けてます。3000万円以下でしたら消費税を納付しなくても良いと思い、消費税分を収入に算入してませんでした。
 また自宅を公庫などで借り入れて建てたおり、設計士さんに設計料を支払った時に、源泉徴収してなかったのを指摘されてあとから、修正申告しました。税務指導ではそんな記憶しかありません。住職に何千万の闇給与なんて言う話しには、ほど遠い気がします。


 さて、時折マスコミや政治家の口から必ず出てくる問題に『宗教法人の不公平論議』がある。新聞も税務当局が、世論誘導的に流がす一方的情報を誇張して書きたてたりしている。
 
 主な題目でも、住職に数千万円の闇給与!。無申告で駐車場経営!。等々である。

 しかし、そうした内容の具体的詳細事例については、あまりふれられていない。かなり以前の国会で消費税の議論の中でも、ある保守系の国会議員は、お経を読んでもらうのもサービスの一種と言う感覚で、課税対象にすべきだと言う議員もいたのには、少々驚かされた。この議員は、日本人の精神生活や、歴史、仏教等の意義や意味が十分な御認識がないのではと思わざるを得ないのである。


 実は、議員の口からこうした『お経もサービス云々』とか、マスコミの不公平税制論議に対して、僧侶側においても全く問題が無い訳ではない。税法に関しての知識を十分持ちあわせていなかったり、不公平論議に対して、宗教界側からの論理たてた説明がされていないのも又事実なのである。

 そこで前述の《住職に数千万円の闇給与!》《無申告で駐車場経営!》などと、税務当局が、世論誘導的に流がす一方的情報に、住職の側で税法にのっとて経理工夫をいたせば何等問題も無くなり、かえって庶民の常識から言って、むしろ【税法に添って経理帳簿をおこなう】事の方が、かえって不公平を助長する結果になる事例について述べてみたいのである。

宗教法人の規模

 まず第一に、こうした宗教法人の不公平論議については、その定義が極めてあいまいで、壮大な伽藍を構える大寺院や、近代的な大建築を誇る新興宗教教団と、村や町の小さな寺院を同列に論じる事が問題である。それは、一般法人について、世界のランキング名簿に掲載される様な、日本を代表する大会社と、ごく身近な会社である魚屋や八百屋と同列に論議するのと同じである点を理解する必要があると思う。

 今までは、税法等についての知識は、多くの寺院の僧侶について、ごく最近までは、余り知識を持ちあわせず、世間との常識の間にずれがあった事も事実である。税務署の指導のある場合、相手は百戦練磨の税務署員。その誘導質問にかゝれば、次々とボロを出すのであり。税法に添って経理を行なえば、合法的に節税が出来る場合も多々あるのである。これが、マスコミに書かれる宗教法人の住職の闇給与の実体の一部であるのである。

 つまり僧侶の側から反論すれば、闇給与については、合法的に税務をおこなえば、大部分が闇給与ではなくなる性格のものである点を、強調しておきたいのである。

 反面、住職個人としては、今までは、税法に関してかなりルーズな点もあった。一般会社では、物を販売いたして、その従業員が代金を集金して、その帰りに何か個人的な物や、食事をして集金代金から支出して残りを集金代金として会社に入金すれば、これは細かく言えば、業務上横領にもなりかねないのである。

 しかし寺の場合は、たとえ住職が檀家の帰りに何か購入して、お布施を半分しか寺に入金しなくても、まさか檀家の人は業務上横領とは言わないであろう。
 こうしたある意味では、税法の甘えが宗教法人(僧侶)側にあった事も事実である。しかし零細法人では、個人的使用のものでも、会社の備品や経費として、経理したり、食事代を交際費などで損金処理する事例が決して皆無ではない。個人的使用の物でも、ある意味では事務費で処理できるので場合もある。こうした経理操作を大部分の宗教法人では、事細かに経理を行なっていなかったのである。従って使途不明金は、住職の闇給与とされてしまうのである。

闇給与について

 そこで住職に数千万円の闇給与について少々解説しておきたいのである。この場合多分宗教法人名義の預貯金から、個人的な使用に用いる為の不動産等を購入したのではと推察される。たとえば子弟の為のマンション購入資金を宗教法人名義から支出すれば、これは、だれが見ても闇給与である。
 しかし、宗教法人が不動産を購入し、それを個人や他人に貸して、使用料金を取れば、収益事業に該当し、法人税法の摘要を受ける。従ってマンション購入の資金を宗教法人の名義の預貯金から支出しても、個人の闇給与とは言えないのである。諸経費や原価償却、借入金利、修繕費用、固定資産税等も収益事業の経費として損金処理出来るのである。
 殆どの場合税法に規定している相当の地代を賃貸収入として経理しても、大赤字になり、法人税は納税しなくても済む。かえって個人の所得税が少なくなるのである。
 税務署は、こうした結果的に納税金額が減少する様な知識については、寺には余り指導せず、税務署員の個人的ノルマ達成の為に、追徴所得税を取る為に、闇給与と処理したがるのである。

収益事業について

宗教法人が行なう収益事業については、宗教法人が収益事業をおこなえば、周知の如く法人税率等で優遇をうけてはいるが課税対象になり、法人税の摘要を受ける事になるのは、よく知られている。
 税法には、宗教法人が、雑誌の発行、説教、講話集、経典等の出版物を出版することがあるが、これらは出版業に該当し収益事業になる。また出版物に掲載する広告についても、収益事業に含まれるとされているが、寺院の中には、寺報や会報をだしている寺院もあるが、会費や、代価を受取らない場合や、その目的が学術、慈善その他もっぱら公益を目的としている場合には、出版業から除外して非課税としている。しかしこれも、税法を厳格に適応すれば、たとえば、布施から、寺報代金として会費として区分経理した場合には、代価相当金額が、収益事業になる場合もある点に留意の必要がある。

 前述した、宗教法人が、出版業を営む場合の収益事業については、その印刷方法や種類。又出版業務や宗教法人の規模は問わないものとされている。
 しかれば、簡単な説教や盆の由来や寺の連絡を掲載いたした寺報を配付いたした場合に、果たして収益事業に該当いたすかどうか迷うところであるが、他に収益事業をおこなっている場合には、収益事業にいたすべきである。と小生は思う。
 なぜならば、本来税法に記載されており税金を払うべきところを、払わない様にする行為を脱税行為と言うのであって。税法に記載されている方法に添って経理を行なうのは、結果的に税金を節約できる事になっても、これは納税義務者として税法を遵守する行為であるから、税務当局も非難するよりも、むしろ推挙すべき事であると言わざるをえない。

 税務当局が、宗教法人を税務指導いたす場合によく使う常套語句に、使途不明金は、個人の闇給与とされますよ。つまり正確に記帳しなさい。個人と寺と収益事業等の経理を厳格に区分経理して。丼勘定はいけませんよと言うのである。
 当然収益事業に関係する支出は、収益事業の収入から支出するのが正しい区分経理の方法であるのである。
 そこで今ここで、無申告で駐車場を営業して、一台20000円として10台預り年間240万円の駐車場収入があったと仮定すれば、固定資産税が18万.舗装等の原価償却が22万.給与その他事務費を100万とすれば、駐車場の課税対象収益額は、100万円になり総額約40〜50万の税金を納税する計算になるのである。

寺報等の出版は収益事業に該当

 寺報等を出版事業として収益事業に入れば、その売上が年間10万とすれば、駐車場と合計250万円になるのである。出版業を収益事業に入れた場合の支出経費を考えてみると。パソコンや、簡易DTP等を5年間のリース契約いたした場合に、年間50〜60万円の経費を収益事業から無条件に損金処理できるの
である。その他出版に関する記事の参考書籍や、掲載写真を撮る為のカメラや旅費までもが、税務署の言う丼勘定がダメとするならば、当然収益事業から支出しなければならないのである。

課税対象の方が不公平助長?

 出版事業の収入金額の数倍の金額を経費として、駐車場の収益の収入の中から合理的に経費として損金処理できるのである。本来は、宗教法人の活動として、経典の出版や、説教集等は、非課税にすべきと個人的には思うが、例えば『親鸞聖人著作全集』として、一般出版社本は、課税で宗教法人が出版する本は非課税とすれば、これは不公平であるから、一律に課税対象にするとしたのであろうが、庶民感情としては、納得できる。
 実際の宗教法人の当事者としては、税法に添って経理を行なわない方が、つまり出版業を非課税にした場合の方が、むしろ公平と思うが、いかがでしょうか?
 この様に出版業を収益事業に入れると、結果的には、まったく関係の無い駐車場収入の中から、宗教法人の本来の活動の経典等の出版までの経費を、税法に従えば損金処理できるのである。この方が、かえって不公平を助長するのではなかろうか?

寺も節税対策熟慮の時代

 税務署は、自分の都合の良い事は、指導するが、以上述べた様な事については、たとえ寺報を出版しても積極的に収益事業に入れなさいとは指導しないのである。つまり納税金額が減少するので、税法をいいかげんに運用する事を宗教法人に対して黙認しているのである。
 当寺にも三年毎に税務署が指導に来るが、ついぞこの様な指導はなされないのである。
 次回には是非聞いてみたいものである。例えば『インドの仏教遺跡を尋ねて』と言う様な小冊子を出版した場合に、その経費つまり外国旅費まで収益事業で損金処理できるかどうか?
 この場合には、収益事業の駐車場収入から支出しても税法に添った合理的経理になるのかどうか?多分黙して語らずであろうが。

 強大な権限を持つ国家機関の税務署である。これに対抗する為には、僧侶も葬儀や法要を勤めるばかりでなく。合法的に宗教法人も節税する智恵を考えなければならない時代に思えばなったのである。

【参考関連資料】

『法人税施行令』 第五条第一項第十二号
 出版業(特定の資格を有する者を対象とする法人がその会報その他これに準ずる出版物を主として会員に配布するために行なうもの及び学術、慈善その他公益を目的とする法人がその目的を達成するための会報をもっぱらその会員に配布するために行なうものを除く)

寺報の無料配付は非課税寺報の有料配付は課税対象


『法人税取扱通達』(付随行為)十五ー一ー六
@ 出版業を営む公益法人が行なう出版に係る業務に関係する講演会の開催又は当該当事務に係る出版物に掲載する広告の引受け。
【特定の資格】 十五ー一ー三十二
『法人税施行令』 第五条第一項第十二号〔出版業〕に規定する「特定の資格」とは、特別に定められた法律上の資格、特定の過去の経歴からする資格その他これに準ずる資格をいうのであるから、次に掲げることに該当することをもってその会員の資格とするような法人は、特定の資格を有する者を会員とする法人にはあたらないことに留意する。
@ 年齢、性別又は姓名が同じであること。   
A 趣味又はし好が同じであること。  
B その他@又はAに準ずるものであること。

檀家等は、特定資格に該当せず


【会報に準ずる出版物】十五ー一ー三十三
『法人税施行令』 第五条第一項第十二号に規定する「これに準ずる出版物」
とは、会報に代え、又は会報に準じて出版される出版物で主として会員だけが必要とされる特殊な記事を内容とする出版物をいう。したがって会員名簿又は会員の消息その他これに準ずるものを記事の内容とするものは会報に準ずるものに該当するが、いわゆる単行本、月刊誌のように書店等において通常商品として販売されるものと同様の内容のものは、これに該当しないことに留意する。 
寺報新聞 説教本 経典 雑誌等は会報に該当せず
【代価に代えて会費を徴収して行なう出版物の発行】十五ー一ー三十六
『法人税施行令』 第五条第一項第十二号の「出版業」の出版業に該当する場合において、当該当出版物の対価が会費等の名目で徴収されていると認められるときは、次に掲げる場合に応じ、次による。
@ 会員から出版物の代価を徴収しないで別に会費を徴収している場合には、その会費のうち当該当出版物の代価相当額を出版業に係る収益とする。
A 会員以外の者に配布した出版物について代価を徴収しないで会費等の名で徴収している場合には、その収受した金額を出版業に係る収益とする。

  布施から勝手に寺報代に支出すると収益事業の収入になる
            
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